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へび
蛇
「中央公論 第二十六年第一号」1911(明治44)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,073 字 · 23 页
自分は向いで見ていたが、多分極まりが悪いので立ったのであろうと思った。御隠居も主人もそう思ったことであろう。
しかし午も晩も同じように、嫁さんだけ早く席を起った。その次の日からは、用事にかこつけて、嫁さんは遅れて食べに出る。主人がなぜかと思って問うと、どうもお母あ様のお話が嫌いでならないと云う。これは穂積家に限ってある事で、食事の時は何か近郷であった嘉言善行というような事を話すことになっている。先代の主人のした流儀が残っているのである。丁度新聞紙の三面記事の反面のような話である。もし、これという出来事がないと、誰でも前日あたりに本か何かで読んだとか、人に聞いたとかいう話をする。そのために人の話を聞くにでも、本を読むにでも、食事の時の話の種子になるような事柄に耳を留めて聞く、目を留めて見るということになっているのである。
主人も不思議に思った。善行嘉言なんぞというものは、人によっては聞いて面白くないということもあろう。しかし別に聞くに堪えないというわけのものではない。うるさくても辛抱していられないはずはない。なぜだろうと云うので、嫁さんに問うて見た。