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とんぼがえり
蜻蛉返り
佐藤 垢石
「釣趣戯書」三省堂、1942(昭和17)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,408 字 · 7 页
外海に棲む鰡の方が、泥臭い味が少ないのである。けれど、いずれにしても処置の方法によって臭いを去ることができる。
どこが臭いのかというと、血液と腸なのである。だから、鰡を釣ったならばまだそれが死なぬうち、頭を縦に、庖丁で深く割る。そして、逆さに吊るして、体内の血液を悉く絞りだしてしまうのだ。次に腹を割いて腸をきれいに洗いだす。そのとき、臍と称するところは、棄てないで取って置くのだ。
かくすると、臭みが去る上に、いつまでも鮮味を保つこととなるのである。腹を割いたならば、そこへ一塩をなすって置けば、一層よろしい。これを家へ持ち帰って、鱗を払い三枚に下ろして、直ちに刺身に作ってよろしいのである。
食べるとき、醤油のなかへ橙酢か姫柚子の一滴を落とせば、素晴らしく味が結構となるのだ。また一夜、一塩に漬けて置いた鰡を、翌日風干しに干して、焼いて食べると、甚だいける。まず、鰡を腹の方から開いて、骨付きのまま塩水に漬け、翌朝塩水からあげて一旦真水で洗い、これを干すと美しい艶に干しあがるのだ。
九州では、小鰡を塩漬けにし、さらに押し酢にして、鮨に作ってこれをいな鮨と唱えているが、これは京都の鯖鮨に似て、随分おいしく食べられる。