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かにこうせん

蟹工船

小林 多喜二

「戦旗」1929(昭和4)年5月、6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,890 字 · 125 页

青空文庫

と云った。

「これでも跳ね起きられるかな」――威張んなの漁夫だった。

「かな――? 馬鹿。こっちは人数が多いんだ。恐れることはないさ。それに彼奴等が無茶なことをすればする程、今のうちこそ内へ、内へとこもっているが、火薬よりも強い不平と不満が皆の心の中に、つまりにいいだけつまっているんだ。――俺はそいつを頼りにしているんだ」

「道具立てはいいな」威張んなは「糞壺」の中をグルグル見廻して、

「そんな奴等がいるかな。どれも、これも…………」

愚痴ッぽく云った。

「俺達から愚痴ッぽかったら――もう、最後だよ」

「見れ、お前えだけだ、元気のええのア。――今度事件起こしてみれ、生命がけだ」

学生は暗い顔をした。「そうさ……」と云った。

監督は手下を連れて、夜三回まわってきた。三、四人固まっていると、怒鳴りつけた。それでも、まだ足りなく、秘密に自分の手下を「糞壺」に寝らせた。

――「鎖」が、ただ、眼に見えないだけの違いだった。皆の足は歩くときには、吋太の鎖を現実に後に引きずッているように重かった。

「俺ア、キット殺されるべよ」

「ん。んでも、どうせ殺されるッて分ったら、その時アやるよ」