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はえ

蠅

海野 十三

「ぷろふいる」1934(昭和9)年2月号~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,774 字 · 40 页

青空文庫

もしやそこに、見馴れない新兵器がいつの間にやら搬びこまれていはしまいかと思って……。

「ややッ、ここに変なものがあるぞ」

幕僚の一人、マレウスキー中尉が突然叫んだ。

「ナナなんだって?」

一同は長靴をガタガタ床にぶっつけながら中尉の方を見た。彼は室の隅の卓子の上に、手のついた真黒い四角な箱を発見したのだ。

「こッこれだッ。怪しいのは……」

「なんだ其の箱は」

「爆弾が仕掛けてあるのじゃないかナ」

「イヤ短波の機械で、われ等の喋っていることが、そいつをとおして、真直に敵の本営へ聞えているのじゃないか」

「それとも、殺人音波が出てくる仕掛けがあるのじゃないか」

一同は喚きあって、その四角の黒函をグルリと取り巻いた。

「あッはッはッ」と人垣のうしろの方から、無遠慮な爆笑の声がひびいた。フョードル参謀の声で。

「あッはッはッ。それア弁当屋の出前持の函なんだ。多分お昼に食った俺の皿が入っているだろう」

「なんだって、弁当の空か?」

「どうして、それがこんなところにあるのか」

「イヤ、さっき弁当屋の小僧が来た筈なんだが、持ってゆくのを忘れたのじゃあるまいかのウ」フョードル参謀は云った。