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はえ
蠅
海野 十三
「ぷろふいる」1934(昭和9)年2月号~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,774 字 · 40 页
「忘れてゆくとは可笑しい、中を検べてみろ」
「早くやれ、早くやれッ」
「よォし」とフョードル参謀は進み出た、「じゃ明けるぞオ」
一同の顔はサッと緊張した。軍団長イワノウィッチは、大刀を立て反身になって、この際の威厳を保とうと努力した。
「よォし、明けろッ」
「明けるぞオ」
フョードルは、黒函の蓋に手をかけると、音のせぬようにソッと外しにかかった。一同の心臓は大きく鼓動をうって、停りそうになった。
「……?」
蓋はパクリと外れた。
「なアんだ」
見ると、函の中には、白い料理の皿が二三枚重なっているばかりだった。皿の上には食いのこされた豚の脂肉が散らばっていて、蠅が二匹、じッと止まっていた。
「ぷーッ。ずいぶん汚い」
「見ないがよかった。新兵器だなんていうものだから、つい見ちまった」
一同は興ざめ顔のうちに、まアよかったという安堵の色を浮べた。
そのとき入口の扉が開いて、少年がズカズカと入ってきた。
「おや、貴様は何者かッ」
「誰の許しを得て入って来たか」
将校たちに詰めよられた少年は、眼をグルグル廻すばかりで、頓に返辞も出せなかった。
「オイ、許してやれよ」フョードル参謀が声をかけた、「いくら白軍の新兵器が恐ろしいといったって、あまり狼狽しすぎるのはよくない……」