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はえ
蠅
海野 十三
「ぷろふいる」1934(昭和9)年2月号~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,774 字 · 40 页
第七話 蠅に喰われる
机の上の、小さな蒸発皿の上に、親子の蠅が止まっている。まるで死んだようになって、動かない。この二匹の親子の蠅は、私の垂らしてやった僅かばかりの蜂蜜に、じッと取付いて離れなくなっているのだ。
そこで私は、戸棚の中から、二本の小さい壜をとりだした。一方には赤いレッテルが貼ってあり、もう一つには青いレッテルが貼ってあった。この壜の中には、極めて貴重な秘薬が入っているのだった。赤レッテルの方には生長液が入って居り、青レッテルの方には「縮小液」が入っていた。これは或るところから手に入れた強烈な新薬である。私はこの秘薬をつかって、これからちょっとした実験をして見ようと思っているのだ。
私は赤レッテルの壜の栓を抜くと、妻楊子の先をソッと差し入れた。しばらくして出してみると、その楊子の尖端に、なんだか赤い液体が玉のようについていた。それが生長液の一滴なのであった。
私はその妻楊子の尖端を、蒸発皿の方へ動かした。そして親蠅がとりついている蜂蜜の上に、生長液をポトンと垂らした。それから息を殺して、私は親蠅の姿を見守った。
ブルブルブルと、蠅は翅をゆり動かした。