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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

そこで帆村は、二人に対し、蠅男の演じた奇略をひととおり説明した。前後の様子から考えると、蠅男は三輪車を奪ってから、大胆にもこの宝塚にひきかえしたのだった。そして彼は多分池谷別邸のなかに幽閉されていたろうと思われる糸子に麻酔剤を嗅がせた上、このトランクに入れ、それを自動車に積んで、彼は泊り客のような顔をしてこのホテルに入りこんだのだった。そして隙をみて、このトランクのなかから糸子を出し、合鍵で帆村の部屋を明けて、そのベッドの上に糸子を寝かせたというわけだった。その上かの蠅男は、脅迫状を作って、窓から庭に投げだし、直ちに帳場氏を電話口に呼び出して、それを拾わせたと説明した。そのとき帳場氏は、怪訝な顔をしていった。

「そら妙やなア。あの電話が蠅男やったとすると、蠅男はホテルの外にいたことになりまっせ。なんでやいうたら、あの電話はホテルのなかから懸けたんやあれしまへんさかい。電話を懸けた蠅男と、この部屋に居った蠅男と、蠅男が二人も居るのんやろか」

帆村はそれを聞いて大きく肯き、

「そのことなら、さっきやっとのことで謎を解いたんです。蠅男はホテルのなかに居るのを知られないために、電話にも奇略をつかったんです」