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はえおとこ
蠅男
海野 十三
「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页
殺人宣告書は誰がもっているのか分らないが、一体誰が殺される役まわりになっているのだろうか。
そのとき帆村は、まっさきに心配になるものを思いだした。彼は急に機械のまわりだした人形のように、トコトコ歩きだした。
彼は交番へ入った。そして電話で、宝塚のホテルに詰めている大川司法主任をよんでもらうように頼んだ。
「モシモシ、こっちは大川だす。なんの用だすかいな」
帆村はその声を聞いて、胸を躍らせた。彼はその後の蠅男の事情を報告して、もしや糸子のところに死の宣告書が来ていないかを尋ねた。
「それは大丈夫だす。そんなものは決して来てえしまへん。安心しなはれ」
大川主任はキッパリ答えた。
帆村は安心をして電話を切ったが、しかしまた新たなる心配が湧き上ってきた。
「誰かが、死の宣告書をつきつけられているのに違いない。その人は何かの理由があって、そのことを警察に云ってこないのではないか。早く云ってくれば助けられるかも知れないのに……」
そんなことを考えつづけているときだった。霞町の角を曲って、こっちへ進んで来た自動車が、ピタリと停った。
誰だろうと見ると、なかからヒョイと顔を出したのは余人ならず鴨下ドクトルの鬚面であった。