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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

警官隊も、この検事の激励の辞にふるい立った。そして此処に、大阪全市をあげての警備陣が組織され、厳重を極めた大捜索戦の幕が切って落とされた。怪人蠅男は、そも何処に潜んでいるのであろうか。

警察投書

稀代の怪人「蠅男」の世にも恐ろしき正体は遂に曝露した。

青年探偵帆村荘六の必死の努力は、警察官をよく援けて、この前代未聞の怪事件の謎を解くことに成功したのだった。

ただ惜しいことには、もう一歩というところで、怪人「蠅男」を逃がしてしまったことである。

蠅男は、しかしながら、帆村の得意とする投縄によって、機関銃仕掛になっている左腕を肩のところからぎ落とされ、あまつさえ左の足首さえ切断されてしまった。蠅男の勢いは、それだけ削がれたのであった。これは皆、帆村の直接手を下した殊勲であった。

だが普通の人間とちがい、勝れた智能をもった蠅男のことだから、いついかなる手をもちいて又候暴逆の挙に出てくるか分らない。だから結局、蠅男を完全に逮捕してしまわないうちは、大阪全市の市民たちは、枕を高くして睡ることができないわけだった。

帆村探偵を激励する手紙や、警察官の奮起をのぞむ投書などが、毎日のように各署の机の上にうずたかく山のように積まれていった。