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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

それでもまだ心配になると見え、窓のところへ、大きな書棚や戸棚をピタリと据えた。

「どうです、旦那はん。これでよろしまっしゃろか」

「うん、まあその辺やな」

「あとは、明いとるところ云うたら、天井にある空気孔だすが、あれはどないしまひょうか」

「あああの空気孔か」と、総一郎は白い天井の隅に、一升桝ぐらいの四角な穴が明いている空気抜きを見上げた。そこには天井の方から、重い鋳物の格子蓋が嵌めてあった。「さあ、まさかあれから大の男が入ってこられへんと思うが、――」

「さようですナ、あの格子の隙から入ってくるものやったら、まあ鼠か蚊か――それから蠅ぐらいなものだっしゃろナ」

「なに、蠅が入ってくる。ブルブルブル。蠅は鬼門や。なんでもええ、あの空気孔に下から蓋をはめてくれ」

「下から蓋をはめますんで……」

「出来んちゅうのか」

「いえ、まだ出来んいうとりまへん。いま考えます。ええ、こうっと、――」

下僕たちが脳味噌を絞った挙句、その四角な空気孔を、下から厚い紙で三重に目張りをしてしまった。

「さあ、これでもう大丈夫です。こうして置いたら蠅や蚊どころか、空気やって通ることが出来しまへん」