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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

この怪ったいな人物が――」

「うむ怪しむのも無理はない。彼は病院から脱走するのが得意な男でネ」

帆村は肩が痛むので左腕を釣っていた。大きな痛みがやっと鎮まるのを待って、怺えかねたように口を利いた。

「――まあ怒るのは後にして頂いて、これをごらんなさい、重大な発見だ」

そういってさし伸べた彼の右手には、同じ色と形とを持った二枚の黄色い封筒があった。

「あッ、これは玉屋氏に出した蠅男の脅迫状や。あんた、どこでそれを――」

「まあ待ってください。こっちが玉屋氏宛のもので、そこの絨毯の上で拾った。もう一通こっちの黄色い封筒は、この暖炉の上の、マントルピースの上にあった。その天馬の飾りがついている大きな置時計の下に隠してあったのです」

「ほう、それはお手柄だ」

「もっと愕くことがある。封筒の中には、ほらこのとおり同じように新聞紙の脅迫状が入っている」といって中から新聞紙を出してひろげ、「同じように赤鉛筆の丸のついた文字を辿って読んでみると、――きさまが血まつりだ。乃公は思ったことをするのだ。蠅男――どうです。玉屋家の脅迫状と全く同じ者が出したのです」

「フーム、蠅男? 何だい、その蠅男てえのは」