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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

と、検事に報告した。

「それは御苦労。すっかり邸宅を取巻いているのかネ」

「へえ、それはもう完全やと申上げたいくらいだす。塀外、門内、邸宅の周囲と、都合三重に取巻いていますさかい、これこそ本当の蟻の匍いでる隙間もない――というやつでござります」

「たいへんな警戒ぶりだネ」

「へえ、こっちも意地だす。こんど蠅男にやられてしもたら、それこそ警察の威信地に墜つだす。完全包囲をやらんことには、良かれ悪しかれ、どっちゃにしても寝覚がわるおます」

この巨大な体躯の持ち主は、頤紐をかけた面にマスクもつけず、彼の大きな団子鼻は寒気のために苺のように赤かった。なににしても、たいへんな頑張り方だった。

村松と帆村は、監視隊の間を縫って警戒線を一巡した。なるほど、映画に出てくる国定忠治の捕物を思わせるような大規模のものだった。警官の吐く息が夜目にも白く見えた。

一巡後、二人は、厳重な門を開いて貰って、玄関に入った。

さすがに屋内は、鎮まりかえっていた。でも座敷に入ると、襖の蔭や階段の下に、警官が木像のように立っていた。そして検事の近づくのを見ると、一々鄭重な敬礼をした。

「ああ検事さん検事さん。