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はえおとこ

蠅男

海野 十三

「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页

青空文庫

検事はパイプを口から離して、静かに云った。

「聞いてみない方より、聞いてみた方がいいだろうネ。しかしこんなくだらん騒ぎに、こんなに皆が一つ処に固まってしまうのじゃあ、完全な警戒網でございとは、ちょっと云えないと思うが、どうだ」

「おお」と署長は始めて気がついたらしく、「これ皆、一体どうしたんや。よく注意しておいたのに、こう集って来たらあかへんがな。――ああ、あの部屋に間違いはあらへんやろな」

署長は慌ててそこを飛びだし、主人公の籠城している居間の方へ駈けだした。

「ウム、よかった。――」

署長は居間の前に、警官が一人立っているのを見て、ホッと安心した。

「オイ異状はないか。ずっとお前は、ここに頑張っていたんやろな」

「はア、さっきガチャンのときに、ちょっと動きましたが、すぐ引返して来て、此処に立ち続けて居ります」

と東京弁のその警官が応えた。

「なんや、やっぱり動いたのか」

「はア、ほんの一寸です。一分か二分です」

「一分でも二分でも、そらあかんがな」

といったが、他の二人はどこへ行ったか居なかった。

「さあ、ちょっと中へ合図をしてみい」

警官は心得て、ドンドンドン、ドンドンと合図どおりに扉をうった。