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はえおとこ
蠅男
海野 十三
「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页
だからこれは――」
検事はそこで云いかけた言葉を切って、ギロリと目を光らせた。
「何だす、検事さん。何かおましたか」
「うむ、正木君。さっきからどうも変なことがあるんだ。血痕の上に触った綱に二種あるんだ。つまり綱の跡にしても、これとこれとは違っている。だから二種類の綱を使ったことになるんだが、現在屍体の頸に懸っているのは一本きりだ」
そういって検事は不思議そうに室内を見廻した。
血によって印刷された綱の跡――このような一見つまらないものを見遁がさなかったのは、さすがに名検事の誉高き村松氏であった。それこそ恐るべき「蠅男」の正体を語る一つの重大な鍵であったとは、後になって思いだされたことだった。
糸子の質問
室内を見廻している村松検事は、そこに帆村の姿を認めたので声をかけた。帆村はしきりに天井を見上げているところであった。
「なんです、検事さん」
「うむ帆村君、ちょっとここへ上って見てくれたまえ。ここに君が面白がるものがあるんだ」
といって、村松検事は宙に下っている総一郎の頸のあたりを指した。
帆村は身も軽々と、踏台の上にとびのった。
「ああこれですか。