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はえおとこ
蠅男
海野 十三
「講談雑誌」1937(昭和12)年1月号~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 118,129 字 · 237 页
と、ヒイヒイいって泣き叫ぶのだった。
それを聞いていると、糸子が父の死を既に察していることがよく分った。帆村は糸子に心からなる同情の言葉をかけて、気が落ついたら、自分と一緒に室内へ入ってお父さまの最期を見られてはどうかと薦めた。誠意ある帆村の言葉が通じたのか、糸子は次第に落つきを回復していった。
それでも父の書斎に一歩踏み入れて、そこに天井からダラリと下っている父親の浅ましい最期の姿を見ると、糸子はまた新たなる愕きと歎きとに引きつけそうになった。もしも帆村が一段と声を励まして気を引立ててやらなかったら、繊弱いこの一人娘は本当に気が変になってしまったかもしれない。
「おおお父つぁん。な、なんでこのような姿になってやったん」
糸子は帆村の手をふりきって、冷い父親の下半身にしっかり縋りつき、そしてまた激しく嗚咽をはじめたのであった。鬼神のように強い警官たちではあったけれど、この美しい令嬢が先に母を喪い今こうして優しかった父を奪われて悲歎やる方なき可憐な姿を見ては、同情の心うごき、目を外らさない者はなかった。
「おおお父つぁん。誰かに殺されてやったかしらへんけれど、きっと私が敵を取ったげるしい。