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ちぬられたかいとう

血ぬられた懐刀

国枝 史郎

「講談倶楽部」1928(昭和3)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,586 字 · 71 页

青空文庫

そうしてその事が秋安の心を、一層の憤りに導いた。

「ははあ左様か、ご貴殿方は、関白殿下にお仕えする、聚楽第のお歴々でござるか。ではなおさらのことでござる。乱暴狼藉はおやめなされ! それ関白と申す者は、百官を總べ、万機を行ない、天下を関り白する者、太政大臣の上に坐し、一ノ上とも、一ノ人とも、一ノ所とも申し上ぐる御身分、百姓の模範たるべきお方であるはずだ。従ってそれにお仕えする、諸家臣方におかれても、等しく他人の模範として、事を振舞いなさるが当然。しかるに何ぞや娘を捉え、淫がましい所業をなさる! いよいよお恥じなさるがよい」

ウンとばかりに遣り込めた。

こう云われたら一言もなく、引き下るかと思ったところ、事は案外に反対となった。五人刀を抜きつらね、秋安へ切ってかかったのである。

「関白の説明汝に聞こうか! 地下侍の分際で、痴がましいことは云わぬがよい。ここに居られるのは殿下の寵臣、不破小四郎行春様だ。廻国風のその娘に、用あればこそ手をかけたのだ! じゃま立てするからにはようしゃはしない、汝犬のように殺してくれよう!」

一人が飜然と飛び込んで来た。

身をひるがえした秋安は、太刀を抜いたが横ッ払った。