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ちぬられたかいとう

血ぬられた懐刀

国枝 史郎

「講談倶楽部」1928(昭和3)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,586 字 · 71 页

青空文庫

殺しては後が面倒だ、そう思ったがためであろう、腰の支を平打ちに一刀!

「ウ――ム」と呻いてぶっ仆れる。

と、懲りずまにもう一人が、刎ねるがように切り込んで来た。

すかさず突き出した秋安の太刀に、ガラガラガラと太刀を搦らまれ、ギョッとして引こうとしたところを、秋安太刀をグッとセメた。ガラガラと地上で音のしたのは、敵が獲物を落としたからである。

「これ!」と叫ぶと秋安は、五人をツラツラと見渡したが、

「不破小四郎と申したな! 誰だ、どいつだ、進み出ろ! この秋安一見したい! 少しく拙者には怨みがある」

ここで一人へ眼をつけたが、

「ははあ貴殿か! 貴殿でござろう!」

そっちへツカツカと歩み寄る。

歩み寄られた若侍は、いかさま不破小四郎でもあろう、一際目立つきらびやかの風で、そうして凄いような美男であった。

が、案外な卑怯者らしい。太刀こそ抜いて構えてはいるが、ヂタ、ヂタ、ヂタと後へ引く。

秋安にとっては怨敵である。萩野を奪われた怨みがある。

「こいつばかりは叩っ切ってやろう!」

で、ツツ――ッと寄り添った。

主人あやうしと見て取ったものか、二人の武士が左右から、挿むようにして切り込んで来た。