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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

「むつかしい本を読んでるなア。女子大学生のアルバイトじやないかって、男に言われなかったかい。二三日中にこのドアを叩くね。北川さんが顔をだすと、アレ、部屋がちがった。失礼ですが、アルバイトの女子大生はどの部屋でしょう」

「オジさん。お酒の支度しましょう」

「アッ。そう、そう」

オヤジは酒肴の支度をはじめる。カズ子はヤエ子をうながして手伝ったが、ルミ子は本から目を放そうともしなかった。

「こちらは大庭先生です」

と放二が一同に披露すると、ルミ子は目をあげて、ニッコリした。

「当ったわ。そうだろうと思っていたわ」

「本から目も放さずにかい」

オデン屋のオヤジがひやかすと、

「そこが職業の手練なのよ」

とルミ子はカラカラ笑った。

七

酒宴はそう長くはつづかなかった。女たちは食べるだけで、酒をのまなかったし、男たちは量をすごして、開宴前から疲れていたから。

「もう、かえろうッと。ごちそうさま」

ルミ子が立ちかけた。彼女だけが、このアパートに自分の一室をもっていた。ルミ子が立ちかけたので、オデン屋のオヤジも腰をうかして、

「オヤ。二時ちかいね。私も帰らなきゃ」

「お疲れでしょう。