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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

変な風にさせるわね、あんたは」

「もう、いいよ」

「よかないわ。二度と再びいたしません、ぐらいのことは云ってもらいたいわね」

ヤエ子はようやく正面を向いて、うつむいて、つぶやいた。

「魔がさしたのよ」

「あんた。自分のことを、そんな風に言うの?」

「ホテルへさそったけど、ショートタイムだからって、言うんです。私、お金がほしかったんです。部屋のない女だと思われたくなかったから」

それまで人々に無関心のルミ子が、ようやく本から目を放して、つぶやいた。

「そんな時が、あるもんだわね。みすぼらしく思われたくない時がね。ヤエちゃん、一目でその人が好きだったのよ。わかるわね」

かすかに笑って、又、本を読みはじめた。

ヤエ子は坐りなおして、手をついて、

「兄さん。すみません」

すぐ立ちあがって、部屋の外へ駈けだそうとした。

戸口で、待ちかまえたように抱きとめたのは、オデン屋のオヤジである。

「よし、よし。それで、すんだんだ。すみません、と一言いいさえすれば、水に流そうと思って、みなさん待ちかねていたのさ。誰だって、魔がさすことがあらアな」

そしてヤエ子の背をさすりながら、部屋の中央へ押しだすようにしながら、