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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
放二はそこから出直そうと思ったのである。
しかし、宿の主婦の観察からは、期待したものを得られなかった。
「あの方は、男の方に不満だったんですよ。五十ぐらいの年配だそうですものね。訪ねていらしたお友だちの方などと争論なさるんですよ。五十ぐらいの年配でなきゃ男はつまんないなんてね。ええ。ええ。私などにも、そんなことを仰有ることがありましたよ。それは、あなた、意地ずく、ヤケで力んでいらッしゃることですよ。そうですとも。そうでなきゃならないことですものね。どこに五十の年寄を好く娘があるものですか」
まったく主婦の希望的観測にすぎなかった。自分の希望に当てはめようとしているだけで、個性というものを見ていないのだ。その観察を自分に合せてゆがめてあるので、多く訊いてもムダであるし、むしろ観点を狂わせる害があった。
放二は主婦との対話を打ちきって、もう一度、記代子の部屋を捜させてもらった。心理を辿る何かが、どこかにひそんでいないかと思ったのだ。
放二はヒキダシをあけたり、本箱の戸をひらいて何となく一冊の本をとりだして見たりして、彼女の心理について、何か今に思い当りはしないかと漠然と期待していた。