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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
「いま記代子が帰ったところだよ」
「ええ。駅で、お見かけしました」
「どうして一しょに来なかったの?」
「ちょッとほかへ回る用がありましたので」
と、放二はさりげなく答えた。長平の問いかけに深い意味があろうとは思わなかったからである。長平は人のことにはセンサクしない男である。ところが、ちょッと、目が光った。
「記代子は、君が来ないうちに帰るのだと言って、いそいでいたぜ」
「ハア」
「何かあったのかい?」
放二は口をつぐんだ。そして、考えた。思い当ることはあったが、意外でもあった。
昨夜、社がひけて、二人は一しょに家路についた。新宿は二人が別々の方向へ岐れる地点だ。そこで下車してお茶をのんだが、記代子は放二のアパートまで送って行くと言いだした。
放二はその場では逆らわなかったが、駅の地下道へくると、
「ぼく、あなたをお送りします。ぼくが送っていただくなんて、アベコベですから」
放二は他意のない微笑をうかべ、記代子のプラットフォームの方へ進もうとすると、
「いいの!」
記代子がカン高い声でさえぎった。おしとめるように立ちはだかったが、顔の血の気がひいている。ひきつッている。