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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

そして、何か、深い理由があるんだわ。キッピイさんに、会ってみたいな」

そしてルミ子は夕刊をとりあげて、放二の示したキッピイの店の広告を眺めていたが、

「私、この店の女給になってみましょうか。二三日いるうちに、秘密をききだすことができるでしょう」

とんでもないことを言いだしたのに気がついて、ルミ子は苦笑した。

「ちょッとしたスリルか。なにか、イタズラがしてみたいのさ」

「気どってやがら」

八重子がやりかえした。ルミ子の言葉に意外に反感をいだいた様子である。

ルミ子は苦笑して、

「フン。ヒステリイ」

「チェッ。しょッてやがら、あんたは、美人だよ。麗人でございますよ。美人女給にお似合いですよ。この町内へ二度と戻ってきなさんな」

「どうも相すみません。パンパンアパートの姐御さま」

「よしやがれ。パンパンでわるかったわね」

八重子がなぜ腹をたてたか、ルミ子には一から十まで分っていた。何よりも嫉妬であった。誰が放二を恋しているというわけではないのだ。ゴミ屑のような生活のなかで、美しい恋なんてものは、ありやしない。しかし、又、あるといえば、生活の全部が恋だけなのかも知れなかった。