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まちはふるさと
街はふるさと
「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页
いっぺんに治らアな」
と置いていった。記代子はそれをのまなかったが、腹痛は自然におさまってきた。
記代子は痛みがとまると、ふと気がついた。薬をおいて行った男は心ばり棒をかけずに立ち去ったのである。その男はモヒ入りの催眠薬を与えたので、安心して心ばり棒をかけなかったのである。
日がくれて、まもない時刻であった。この時刻は、この家で最も人の少い時間であった。戸に手を当てて静かに少しひいてみると、たしかに心ばり棒はかかっていなかった。
記代子は戸をあけた。庭へ降りた。花壇を走った。塀をのりこえた。その大半が夢中であった。
夜中に、青木の宿へ辿りついた。
七
記代子は青木の部屋へたどりつくと、高熱を発して寝こんでしまった。何一つ語り合う間もなかった。
夜っぴて看病して、翌朝は影のように生色を失って、社へかけつけると、せつ子に会って、報告した。
「二目と見られないような有様ですよ。よくも怪しまれずに、ぼくのところまで辿りつけたもんだなア。足は素足で、血をふいているし、顔も、全身もむくんで、悪臭を放つのさ。ぼくは一目見たときに、実に「なれの果て」ということをグッと感じて、目がくらみそうな切なさでしたよ」