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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

「なれの果てだから、どうしたって云うの」

せつ子は冷めたく、あびせた。

「記代子さんという娘の愛情が、あなたのところへ戻ってきたんじゃないのよ。一人の娘の悲劇が、あなたから出て、あなたへ戻っていったのよ。なれの果てとは何ですか」

怒りを叩きつけると、せつ子は風のように、とびだしていった。彼女はただちに穂積をつれて、記代子を病院へ移した。

せつ子は秘密探偵にたのんで、エンゼル家を見張らせていた。記代子の外出を待ちぶせて拉し去るつもりであったが、十日の余も日数をへて、なんの効もなかったのである。

放二はまだ休んでいた。

「北川君に来てもらって、つききって貰いましょうかね」

穂積がこう申しでたが、

「ダメですよ。娘のあられもない姿を若い男に見せるのは、もってのほかよ。あなたのような仙人は、そろそろ男の口にはいらないから、これが適材適所なのよ」

「ぼくの方が適材適所さ」

こう呟く声にふりむくと、いつのまに来たのか、青木がドアの横手の壁にもたれて、パイプをくゆらしていた。

「風と共にきたる」

青木はせつ子のおどろきに応じるように、皮肉なカイギャクを弄した。

「ねえ、社長さん。