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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

実に酷薄ムザンですよ。最も酷薄なるものは、痛くもカユくもないものだ。それは、君に於て、まさに最も適切だね」

長平はてんでとりあわなかった。それは全く水ムシと同じ呪わしいものに見えたが、水ムシに悩む自分の方を考えると、青木はクサらざるを得なかった。

十一

記代子は京都の土をふむと、新しい気持が生れた。東京では四囲がみな敵地のような気持で、どこにいても気持が荒み、息苦しく、安息もできなかったが、京都へ着くと、自然に気持がおだやかになっていた。誰がむかえてくれたわけでもなく、古い都の街や自然が彼女によびかけているわけでもなかった。いつも傷口にさわられているようなイライラしたものから、遠く離れた安心を覚えた。なにかキレイにぬぐわれたような清爽感をも覚えた。

東京にいたって、あの広い東京のことだもの、彼女の傷口にふれる人間にめったにぶつかるものではない。京都に来たからって、傷口にふれる男にどこでぶつかるか分ったものではないのである。しかし、京都へ来たという実感の中には、そういう理窟を超越した安心感があった。

「旅をすると気持が変るというのは、こんなことを云うのかしら」