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まちはふるさと

街はふるさと

坂口 安吾

「読売新聞 第二六三六七号~第二六五二〇号」1950(昭和25)年5月19日~10月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 193,435 字 · 389 页

青空文庫

いつも、そうでしたもの。

私の部屋に先生がお泊りのころから、兄さんが死んだら自殺しようと覚悟していました。自殺のフミキリに兄さんの死を使うことを咎めないで下さい。死ぬッてこと、私にはなんでもないことなんです。生きていることがなんでもなかったように。たゞ私にとっては、兄さんがいて下さること、いつもほほえんで私の生活を見守っていて下さることの喜びが全部でした。

私はこの世になんの不平もありませんが、兄さんが生きていて下さらなければ、ムリに生きてることはないような気持なのです。兄さんが死んだから、私も死にたいのです。センエツかも知れませんが、兄さんと同じことがしたいだけです。兄さんが地の下へおはいりなら、私も地の下へ入れてもらいたいのです。けっして恋というものではありません。ただ兄さんのお側ちかくへ行かれるということ、これからも一しょに見守っていただけることを信じていたいだけです。そして、生れてきたことを胸いっぱい感謝して、一人のパンパンが死んだことを信じて下さい。

お叱りをうけると困るんですけど、先生におねがいがあるのです。私、お線香一本たてていただきたいとも申しません。