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うらぎり
裏切り
「新潮 第五一巻第九号」1954(昭和29)年9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,343 字 · 70 页
三人いる女中のうちの一人で、とても美しい人でした。女子大中退という教養もかなりの人で、こんなところで働くのがフシギと申すほかない麗人でした。御座敷女中入用のハリ紙をみてこの人が訪ねてくれた時にはトオサンもぼくもびっくりしたもので、
「ハキダメへ鶴がおりるということは申しますが、こんなチッポケなうす汚い安料理屋へあなたのような人が働いたらおかしいや。よした方がいいですよ。よその立派な店がいくらだって雇ってくれますぜ」
トオサンはむだなことを云わさないと云わんばかりにこう申したものですが、小夜子サンはここが気に入ったから働かせてくれと重ねて云うのです。
「ここのどこが気に入ったんです」
「あなたがそんなふうに仰有るからよ。私あんまりパッとしたところで働きたくないんです」
「あなたがパッとしすぎてるからさ。ここじゃア、しかし、どうも、ねえ。あなただけパッとしすぎて、ここの客が寄りつかなくなッちゃうよ」
まったく見るからにパッとした存在でした。ミナリだって渋くて上等なものでした。一見して家柄を感じさせるような気品があって、それで目がさめるほど美しいのですから、パッとしすぎてここの客がよりつかなくなるというのも云いすぎではありません。