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らしんのにょせん
裸身の女仙
野村 胡堂
「朝日」1932(昭和7)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,437 字 · 29 页
――ところで、三千石のお旗本のお部屋様になった姐御は幸せかい。親方は晩酌の度に、そればかり心配して居るよ」
「有難う、まア、此通り暮して居るから、仕合せと言うものだろうよ、不足を言えば限りの無いことだから――」
「そうかね、その言葉の様子じゃ、あまり香ばしい事も無さ相だ、まア、辛抱しねえ」
「お前に意見を言われるようになったのかねえ」
「ヘッ、其辺は矢張り昔の姐御だ、――尤もお月様の光じゃ、はっきり判らねえが、美しいことも昔の通りらしいネ」
「何をつまらない」
「ところで姐御、ツイ二三日前、両国の小屋へ、変な人が訪ねて来た」
「…………」
「五年越し、俺達の一座を尋ねて、日本国中を遍歴ったと言う若い浪人者だ。尤も、そう言ったところで、親の讐を討つわけでも、俺の綱渡りが見度いわけでも無い。手っ取り早く言えば姐御に逢って、話し度いことがあるんだとさ」
「…………」
「おッ、ひどい蚊だ、すまねえが、庭石の上に腰を下して貰って、その浪人者の話てえのを受売り乍ら、一席やらかそう」
源吉は七三にからげた裾をおろして、脛から踵を包むように庭石の上に腰をかけました。その前にこれも中腰になったお鳥、縁側の光から、源吉の姿を庇うように、団扇を動かして、無意識に蚊を追い払って居ります。