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せいようのはまやき

西洋の浜焼

中谷 宇吉郎

本文「あまカラ 第五十二号」甘辛社、1955(昭和30)年12月5日<br>付記「あまカラ 第五十八号」甘辛社、1956(昭和31)年6月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,797 字 · 10 页

青空文庫

他の都市からのお客などがあると、クラム掘りに案内して、それを家庭で料理して出すのが、ちょっとしゃれた御馳走でもあり、また趣味のよいもてなしということにもなっている。日本だったら松茸山に案内するというところであろう。

ところでクラムベークというのは、この貝と蝦と玉蜀黍とスイートポテトなどを、クラントウ風に「浜焼」にした料理である。もちろん野外でやるので、木の葉の代りに海藻をつかうところが変っているだけで、あとは全くクラントウと同様である。

ニュー・イングランドの海岸地方は、海岸線が非常に屈曲していて、入り曲った湾がたくさんある。海岸からちょっとはいると、一望の平地であるが、耕地はほとんどなく草原か灌木の荒地になっている。ところどころに、あまり背の高くない松林が見えるのが、日本の海岸地帯、とくに日本海の沿岸を思わせる。しかし空は妙に澄んで、夕方になると、地平線の近くは、高緯度の土地に特有な紫色に光り、それが青磁色の空に溶け込んでいる。風は全くない。

まずこういう草原を想像していただいて、そこでクラムベークが始まるわけである。六尺に十二尺くらいの場所を、一尺近く掘り下げ、その周囲に、差し渡し一尺程度の石塊をずっとならべる。