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せいようのはまやき
西洋の浜焼
中谷 宇吉郎
本文「あまカラ 第五十二号」甘辛社、1955(昭和30)年12月5日<br>付記「あまカラ 第五十八号」甘辛社、1956(昭和31)年6月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,797 字 · 10 页
ニュー・イングランドの浜焼
もっともこれは私の空想であって、実はまだこの料理は食べたことがない。話をきいただけである。それで味のことはぜんぜん書く資格がないわけで、雰囲気を想像して、羨ましがっているだけである。しかしこの話をしてくれた氷河学者は「ああいうおいしい料理は、他には決してない。一度ぜひアルゼンチンへ遊びに来ないか。このクラントウを御馳走するから」と言っていた。
いかにも勇しそうな料理なので、一つこの話を紹介しておこうかと思ったが、食べたことのない料理の話を書くのは、どうもむつかしいので、控えていた。ところが最近米国の東部、ニュー・イングランドの大西洋岸にある町で、このクラントウと非常に似た料理を食べたので、前書として、この話を持ち出したわけである。
ニュー・イングランドの浜焼
ニュー・イングランドの「浜焼」は、クラムベークという名前である。辞書を見ると「焼蛤の会」となっているが、それでは何のことか、よくわからない。
クラムは海産の二枚貝で、蛤よりもむしろ形は鳥貝に似ている。大きさは長い方で二寸から三寸、蛤よりはだいぶ大きい。この貝は、この付近の渚でいくらでもとれるそうで、ちょうど日本の潮干狩のように、家族連れでこの貝を掘りにいくのが、土地の風習になっている。