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スペインのこい

西班牙の恋

国枝 史郎

「新趣味」1923(大正12)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,387 字 · 49 页

青空文庫

「確に殺したとお思いですか?」

ダンチョン様はそう云われると、驚いたような表情をして、

「確に殺したと思います。その証拠にはこの通りムリオは死んで居るのですから……尤、先刻、この家から、ムリオが死んだという事を、電話で知らして来ない迄は、半信半疑で居りましたが」

「半信半疑でいた訳は?」

「その訳は、あんまり奇怪なので……」

「奇怪! 奇怪とは何う奇怪です?」

「それを私が申し上げても、恐らく御信用なさいますまい……」

「信用するしないは別として是非それを聞かせていただきましょう」

「それほど仰有るなら申し上げますが、私はムリオを射つ代りに妖怪を射ったように思いましたので」

室の中は再びざわめきました。

「ほほオ、妖怪? 妖怪とは?」

「胴から上は人間ですが胴から下は動物という、そういう妖怪でございます」

「その妖怪がどうしました?」

「その妖怪が窓外に立ってこの室を覗いて居たのでした」

「それを放ったと有仰るので? その時あなたは何処にいました?」

「冬薔薇の蔭に居りました」

「妖怪、妖怪、妖怪を放った?」

判事は検事と眼を見合わせ、そんな事は信じられないというように、苦笑を口端へ浮かべたものです。