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にしおぎずいひつ
西荻随筆
「文学界 第一巻第一号」1949(昭和24)年3月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,343 字 · 7 页
カラダには熱があり、中耳炎気味で耳が痛くて困っている時であったが、それだけに、仕事もやりたくない状態だったから、西荻へ出向いて、アカシを立てることにした。
一人では、とても行けないから、大井広介に助太刀をもとめて、代々木へ訪ねたら、彼はイトコが立候補して、選挙応援に九州へ出向いて不在であった。郡山千冬なら睨みがきくだろうと電話をかけてもらったが、これも不在。銀座なら、雑誌社、新聞社がたくさんあって、豪傑の三人四人たちまちかり集めることができるが、新宿には、その当てがない。一人、居た。紀伊国屋の田辺茂一先生。これは、ふとっていて、睨みがききそうである。喜び勇んで紀伊国屋へ駈けつければ、社長は、今しがたお帰りになりました、という返事であった。
かくては、是非もない。灯ともし頃となり、豪傑どもが、三々五々カストリ街へ現れるのを待つばかり。ところが生憎なもので、谷丹三の店と、マコの店を、行ったり来たり、豪傑の訪れを待っているのに、こういう時に限って、一人も豪傑が現れない。谷崎精二先生のような温厚な君子人が現れるばかり、ままならぬものである。
両店を往復しているうちに、私はメイテイしてしまった。