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ふくめんのぶとうしゃ
覆面の舞踏者
江戸川 乱歩
「婦人の国」新潮社、1926(大正15)年1~2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,827 字 · 30 页
私はもうくよくよすることを止め、先程とは打って変って、ニヤニヤと気味の悪い独り笑いを、洩しさえするのでした。
私はもう一度外出の支度をととのえました。井関さんの所へ押しかけようというのです。私は彼に、私がどんなに平気でいるかということを見せつけて、昨夕の仕返しをしなければなりません。
「オイ、タクシイを呼ぶんだ」
私は大声に、女中に命じました。
私の家から井関さんの住居までは、さして遠い道のりではありません、やがて車は彼の玄関に着きました。ひょっと店の方へ出ていはしないかと案じましたが、幸い在宅だというので、私はすぐさま彼の客間に通されました。見ると、これはどうしたというのでしょう。そこには、井関さんの外に二十日会の会員が、三人も顔を揃えて談笑していたではありませんか。では、もう種明しが済んだのかしら、それとも、この連中だけは、私のような目にも会わなかったのかしら。私は不審に思いながら、しかしさも愉快そうな表情を忘れないで、設けられた席につきました。
「ヤア、昨夜はお楽み」
会員の一人が、からかうように声をかけました。
「ナアニ、僕なんざ駄目ですよ。君こそお楽みでしたろう」