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みおとされているきゅうしょ
見落されている急所
宮本 百合子
文学と生活との関係にふれて
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,006 字 · 10 页
「白道」の作者が文学に対する愛着のあまり自身の生活におけるこの社会的な現実の本末を見誤って、七八年という歳月を文学修業に焦って来たと見るのは、私の浅見であろうか。
「白道」の作者は、殆ど痛々しいくらい、書かなければならぬ、書かなければならぬと、頭の内で叫んでいる。それにもかかわらず、作者としての眼を、どこに据えて作品を書いてゆくかということになると、何か忽々と自信なく爪立って自身の興味ふかい実際生活の彼方の空漠としたところを手探りはじめる観がある。
自分が現代の日本の恐ろしい窮乏にある農村の、しかも小地主の高等教育をうけた娘であるという事実、そのような娘との交渉においていろいろ家計のやりくりなどと絡んで動く田舎の親戚達の感情、その表現としての微妙な仕うちというようなものは、農村という社会的な背景をもつ今日の文学の内容として取り上げて見るに価値ないものであろうか?
図書館に勤めるようになった一人の若い作家志望の女が、その一見知識的らしい職業が、内実は無味乾燥で全く機械的な資本主義社会の経営事務であることを経験し、そこの官僚的運転の中で数多い若い男女の人間が血の気を失い、精神の弾力を失ってゆくのを目撃し、そのような働きと自分の人間らしい希望との間に激しい矛盾を感じて苦しむということは果してその女一人だけの感じる