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みおとされているきゅうしょ
見落されている急所
宮本 百合子
文学と生活との関係にふれて
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,006 字 · 10 页
つまらない個人的な苦痛であろうか。現在われわれの棲んでいる世界には、自分の働きで生きてゆかねばならぬ女が何億人かあって、その苦痛こそは全く世界人口の半数を占める女の共通な苦痛の呻きではないであろうか。そのような人間として女としての苦痛の声は、文学に描かれるにふさわしくないものであろうか。
「白道」の作者は、抽象化された書かなければならないという憑物に目かくしをされて、自身既に自活しなければならない女としての二つの足で踏み入った文学の素材としての生活の宝の山を自覚しないで過ってしまったかのようである。
作者は、過去のブルジョア作家連が、その身辺雑記や折々の写真やらで示す所謂「作家生活」というものを自身の生活にもあてはめようと思い、一面には、そういう作家生活なしに作品はかけぬという激しい不安に捕われたかのようにも想像される。
この点で「白道」の作者は、その文学に対して抱く執着のつよさにも拘わらず、真の意味で文学の分野における新人として自身を押し出して行こうとする、健全な野心をすてていると思う。何故ならば、今日、世界の文学を通じて、何等かの意味で進歩的な役割を果す作品というものは、とりも直さず今日の社会を構成する多数者の生活感情、利害にふれたもの以外にあり得ない。