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おやがすてられるせそう
親が捨てられる世相
「週刊朝日 春季増刊号」1952(昭和27)年3月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,326 字 · 15 页
老後を考えて一生の計をたて、青春や人並の楽しみすらもギセイにして粒々辛苦のアゲクに、これですよ。実にバカを見たものだ」
これは彼の口癖だった。尤も千万なグチではあるが、どこにもハケ口のない暗いグチだから、きかされる方にも救いがなくて、やりきれなかったものだ。
その彼が気を取り直して、
「イヤ、イヤ。こうグチを言っちゃアいられない。何か私の働く口はありませんかな」
と言う。言葉の方はちょッと人の気をひいてみるという程度に軽いが、眼ツキがギラギラして、食いつくような真剣さがあった。もちろん、安い徴用者でいくらでも間に合う時だから、彼の働く口などはない。
強制疎開で碁会所が閉鎖というとき、何年間かお世話になった盤石を眺めている彼の眼ツキは、私たちの惜別とちがって真剣な執着がこもっていた。「盤石格安売ります」というハリガミが、ガラス窓も、店内の壁にもはりつけられていたのである。
「今ならこの盤石をそっくり買うこともできる。せめて十面買えば、自分も楽しみながら暮しのタシになるかも知れん。農家の一室をかりて荷物だけ疎開のダンドリもできましたのでなア。しかし、我々が再び碁を楽しむような生活が何年さきに訪れることやら……」