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かいしゃくがくとしゅうじがく
解釈学と修辞学
三木 清
「哲学及び宗教と其歴史(波多野精一先生献呈論文集)」岩波書店、1938(昭和13)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,866 字 · 24 页
ひとが誰かを相手に話すとき、ひとは相手がいかなる心の状態にあるかを、彼の感情とか気分とかをほとんど無意識的に考慮し、言葉はこれによって規定される。ひとは単に相手のロゴス(理性)にでなく、また彼のパトス(情意)に訴える。ひとは相手を自分の意見に対して受取り易く、注意深くかつ好意的ならしめる――この三つの点は古代の修辞学者の掲げた伝統的な規定に属している――ために、言葉を技術的に用いる。アリストテレスが模範的に示したごとく修辞学はパトス論と密接な関係を含んでいる。修辞学は聴く人のパトスによって規定されるのみでなく、他方話す人自身のパトスによって規定される。それは各人のパトス、またエートスによって規定され、性格的なものである。性格というものは主としてパトス的なものである。かようにパトスないしエートスに基づくものとして修辞学は表現的である。修辞学は何よりも話す人の人間、性格、すなわち主体的なものを現わす。文は人なりというのはよく知られた格言である。修辞学を単に言葉の問題としてでなく思考の問題として見て――思考の仕方と言表の仕方との間における内面的な一致なしに真の修辞学は存しないであろう――、これと純粋に論理的な思考とを概念上区別するとき、論理的思考が対象的に限定された思考であるに反して、修辞学的思考は主体的に限定