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にんしきろんとはなにか

認識論とは何か

戸坂 潤

「認識論」戸坂潤、山岸辰蔵、三笠書房、1937(昭和12)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,432 字 · 116 页

青空文庫

ことになる。実に不思議な実在論であり模写説である。

だが一体そういう完璧模写説は、誰が一体歴史上唱えたのか。誰もそんな模写説を採用しているものはない。そういうものを考え出したのは、他ならぬブルジョア観念論的認識論者自身であったのだ(主に新カント主義者である。カント自身はそんなものを仮想敵とはしなかった。彼は世間の人々が、現象を通して物そのものを認識出来ると思っていることを、批難しようとしただけだ)。

近世に於ける真理観念は歴史上の事業としては、明白説として現われている。明白説は一般に客観的な物自身の方向に真理の根拠を求めようとする模写説に対して、正反対の方向へ向いている。真理は観念か意識か、そういう主観そのものの内に根柢を見出す。近世哲学の大きな課題の一つである自我の問題と、明白説との関係は、デカルトに於て最も明白だろう。彼によれば観念が明晰で判明であること、即ち判断が確実で疑うべからざること、それが真理の特徴だ。そして他方疑うべからざる真理はさし当り、「自分が意識している」(我考う)という事実だという。「自分が意識することが即ち自分がいることだ」