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にんしきろんとはなにか
認識論とは何か
戸坂 潤
「認識論」戸坂潤、山岸辰蔵、三笠書房、1937(昭和12)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,432 字 · 116 页
建築物は確かに生活の表現である。時代人の略々共通な心的要求に沿い、注文主の観念と建築家の芸術的技術的創造精神との現われだ。だが建築には物質的な基底がある。単に石や木材やコンクリートや鉄筋が必要だというのではない。建築は生産経済上に於ける技術的な客観条件の上で初めて成り立つのである。工芸品は民族精神か何かの表現であるかも知れない。だがそう云っただけでは、夫が陶工や漆工の生産力を消費する生産機構からの所産であるという生々しい現実は、一向理解出来ない。文化は単に或る主観的観念的なものが、偶々客観的な物質的存在をかりて、表現されたものではない。文化の面目は元来が客観的なもので、社会機構から来る所産であった。
認識が客観化されて文化形象になるのではない。初めから客観的である処の文化形象なるものを形成することが、広義に於ける認識ということだ。文化の客観的なるものも、実は認識の具体的内容ということに他ならない。認識とは、歴史的社会に於ける生産機構の膠質物である上部構造としての文化を指向するもので、就中それが一定の相対的な独自性と自動的メカニズムを持つという一つの事実を、云い表わすための言葉だ。