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せいじつなじっけんしゃ・まげんすい

誠実な実験者・マ元帥

坂口 安吾

「読売新聞 第二六六九九号」1951(昭和26)年4月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 913 字 · 2 页

青空文庫

敗戦国の手足を苛酷にもぎとれば再び戦争へ駆りたてる条件をつくるようなものである。手足をもがれたままでは暮せないからだ。歴史はこの課題を解決したことがない。

マッカーサー元帥は、自分に託された敗戦国日本にこの課題の歴史的な解決をなしとげたいという責務と情熱に燃えて日本へ乗りこんできたように見うけられますね。敵意や偏見は見られない。建設の意欲、情熱、義務感。創作の、といってもよい。武人の理想はかくあるべきかも知れないが、このむずかしい課題に対して、彼のように誠心誠意をもって努力した例は稀でしょうね。

彼は果敢な実験者であった。この課題に対しては実験してみるよりほかに手段がないのだ。共産党も公認したし、農地も解放した。憲法も改めた。農地解放は実質上の無血大革命のようなものだが、日本の農民も、農民の指導者たる政党も、その受けとり方がテンヤワンヤで、稀有な大改革を全然無意味なものにしてしまった。農民の指導者たる政党などには、常時万端の設計がなくてはかなわぬはずのものだが、ダメなんだね。口惜しい話さ。

むろん日本の政治家には、このような実験は許されない。自国の政治に実験ということはあり得ないから。