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ちょうほうちゅうけいきょく

諜報中継局

海野 十三

「新青年」1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,537 字 · 40 页

青空文庫

それは何故です。婦人としてわが国最高の栄誉ある地位を……」

カスリン「あなたはご存じないのです。あたくしは、あの栄誉の地位にあるが故に、昼となく夜となく表と裏とから責め虐まれているのです。あたくしに媚びへつらう群と、あたくしを罵詈讒謗する群と……とても耐え切れませんわ」

愛人「なるほど。まことに同情にたえません」

カスリン「それに大統領閣下が、このごろ非常に神経質になられて、何でもお疑いになるのですよ」

愛人「しかしもうすこし辛抱して居られたら……閣下は、その中では何もかもよく分って居られるのでしょう」

カスリン「あたくしの身の上に、黒い影が蔽い掛ろうとしています。あたくしの全然関知しない事件について、あたくしは最も不名誉な立場に置かれそうなのです。もしそんなことになったら、どうしましょう」

愛人「それは困りましたね。あなたを陥れる黒幕の主人公がはっきり分って居れば、僕はその人物をミシンで血煙をたたせてやるのですがねえ」

カスリン「そんなことは不可能ですわ。その主人公は閣下それ自身でいらっしゃるのですもの。でも……でも、白堊館の中には、全然あたくしの仇敵ばかり居るわけでもないのです。