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ぶたきちとヒョロこ

豚吉とヒョロ子

三鳥山人

「九州日報」1926(大正15)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,498 字 · 111 页

青空文庫

「あなたが初め私達二人に倍のお金を払えと云ったから、私たちは河を渡ったのです」

「ウン、そんなら橋賃は払わなくてもいい」

と、一人の年老った役人が云いました。これをきくとお婆さんは一層怒って、

「ええ、口惜しい。あなた方は泥棒の味方をするのですか。そんならこの腕をヘシ折ってやる」

と云ううちに、ヒョロ子の腕に両手をかけました。

ヒョロ子は驚きました。腕をへし折られては大変ですから、思わずその手を一振り振りますと、それに掴まっていたお婆さんは、まるで紙布のように宙に飛んで、河の中へポチャンと落ちてドンドン流れてゆきました。これを見た役人たちは、

「ヤッ、大変だ」

というので、みんな婆さんを助けに走ってゆきます。ヒョロ子もビックリして助けに行こうとしますと、今度は豚吉が腕を捕まえて離しません。

「今の間に逃げろ逃げろ」

と云ううちに、ヒョロ子を引っぱってドンドン逃げ出しました。

豚吉とヒョロ子夫婦は、成るたけ人の泊らない淋しそうな宿屋を探し出して泊りますと、豚吉の着物を乾かしたり、お昼御飯をたべたりしましたが、それから宿屋の番頭さんを呼んで尋ねました。

「私たちは見かけの通り、身体が長過ぎたり太過ぎたりするものですが、この町に私達の身体を当り前に治してくれるお医者さんは無いでしょうか」