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ぶたきちとヒョロこ

豚吉とヒョロ子

三鳥山人

「九州日報」1926(大正15)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,498 字 · 111 页

青空文庫

「それはよいお医者があります」

とその番頭さんは云いました。

「この町の外れに一軒のきたないお医者様の家があります。そこの御主人は無茶先生と云って、無茶なことをするので名高いのですが、どんな無茶なことをされてもそれを我慢していると、不思議にいろんな病気がなおるのです」

「フーン。その無茶とはどんなことをするのだ」

と豚吉が心配そうにききました。

「それはいろいろありますが、わるいものをたべてお腹が痛いと云うと、口から手を突込んで腹の中をかきまわしたり、眼がわるいと云うと、クリ抜いて、よく洗って、お薬をふりかけて、又もとの穴に入れたりなされます」

「ワー大変だ。そんな恐ろしいお医者は御免だ」

「そうで御座いましょう。どなたもそれが恐ろしいので、その無茶先生のところへは行かれませぬ。そのために無茶先生はいつも貧乏です」

「もうほかにお医者は無いか」

「そうですね。只今ちょっと思い出しませんが」

「そうかい。又上手なお医者があったら知らせておくれ」

「かしこまりました」

と番頭さんは帰ってゆきました。

「あなたはその無茶先生のところへお出でになりませんか」

とヒョロ子が云いますと、豚吉は眼をまん丸にして手を振りました。