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ぶたきちとヒョロこ
豚吉とヒョロ子
三鳥山人
「九州日報」1926(大正15)年1~3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,498 字 · 111 页
「滅相な。お金なんぞは一文も要りません。あんた方のような珍らしい夫婦を乗せるのは一生の話の種だ。さあさあ、乗ったり乗ったり」
と云ううちに、馬車のうしろの戸をあけてくれました。
ところが、その入り口が小さいので、豚吉の肥った身体がどうしても這入りません。しかたがありませんから、馬車の前の馭者台の処にお爺さんと並んで乗って、ヒョロ子だけ中に這入らせようとしますと、天井が低いので、ヒョロ子がしゃがんでも頭が支えます。そればかりでなく、豚吉が右側に乗ると馬車が右に引っくり返りそうになり、左に乗ると左側の車の心棒が曲りそうになります。
「これあ大変なお客様だ。折角無代価で乗ってもらおうと思っているのに、二人共乗れないとは困ったな」
「おれも乗りたいけれども、これじゃ仕方がない」
「もうよしましょうや。あなたも些し辛棒しておあるきなさいよ」
こんなことを云っているうちに、馬車屋のお爺さんは不意に手をポンとたたいて、
「うまいことを思い付いた。二人とも馬車の屋根に乗んなさい。私がソロソロあるかせるから」
「ウン、それはいい思い付きだ」
と豚吉もよろこびました。けれども背が低いので登ることが出来ません。