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ぶたきちとヒョロこ

豚吉とヒョロ子

三鳥山人

「九州日報」1926(大正15)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,498 字 · 111 页

青空文庫

ソレ御覧なさい」

と云ううちに、豚吉を抱えて眼よりも高くさし上げました。

「アッ、見えた見えた。オーイ、馬車屋ア――。早く来――イ」

と豚吉も喜んでハンケチを振りました。

これを見た馬車屋のおやじはビックリしました。

大変に高い、大きな恰好をした人間が呼んでいる。早く行って見ようと思いましたので、馬の尻を鞭でたたいて宙を飛ばしてかけつけました。

「やあ、これあ珍しい御夫婦だ。おれああんた方のような珍らしい御夫婦は初めて見た。どうもえらく高い人だな。別嬪さんの方はまるで棹のようだ。それに又、旦那様の肥って御座ること、どうだ。まるで手まりのようだ」

と馬車屋は大きな声で云いながら近寄って来ましたので、夫婦は真赤になってしまいました。

「あたしはこんな馬車屋さんの馬車には乗らない。今にどんなことを云ってひやかすかわからないから」

とヒョロ子は云いました。

「馬鹿を云え。一所に乗って行かなければ何にもならないじゃないか……。どうだい、馬車屋さん。これから町まで倍のお金を払うから、大急ぎで乗せて行ってくれないか」

と云いました。

馬車屋は大きな手をふって云いました。