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ていそうについて

貞操について

宮本 百合子

「婦人公論」1946(昭和21)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,541 字 · 11 页

青空文庫

私たちが、或るひとつの言葉からうける感じは、実に微妙、複雑なものだと、びっくりする。たとえばここに貞操について、という表題がある。これを見たとき、私たちの心に直感されたのは何だろう。貞操というもののたしかな価値の感じだろうか。それとも、それは現代生活の波瀾のなかで、婦人帽のはじにちょっと下げられた一ひらのヴェールのように、その不安定さ、あいまいさの故に却って風情と好奇心とを、ひかれるような言葉として感じられるだろうか。

貞操というような言葉をきいたとき、今日の若い多くの人々の眼の中には、その言葉に圧迫されたり拘束を感じたりするような色はもう見えない。それにかわって、一体貞操というものの本質はどういうものだろうかと問い質したげな輝きがつよくあらわれて来たのである。今日、世界のいたるところで、過去の価値評価がくつがえされつつある。政治上の権力においても、又風習においても。ヨーロッパよりも六七十年おくれて、民主社会にふみ出そうとしている日本では、おくれているだけに事情は複雑で、過去のモラルの形式は、急速に現実の風波にさらされ、再評価されつつある。貞操という種類の言葉が、よかれあしかれ、何かの実感をもってうけとられるのは、今日若い命の力ばかりをたよりに歴史の曲折をしのいでいるような若い人々からみれば、もう一時代