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ていそうについて
貞操について
宮本 百合子
「婦人公論」1946(昭和21)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,541 字 · 11 页
狩りのえものがあって何日かは食べるものの心配から解放されたとき男は自分の好きな女の小舎に入って、外に自分の弓矢をかけておくのが習慣であった。部落のほかの男たちは、そこに一対の弓矢がかけられている間は、その持主に良人の位置を認めるわけである。
獣の巣ごもりに近いそういう男女の結合の形でも、やはり人間には互の好きさが大きい役割をもっていた。その弓矢をもった男と、小舎の女とは、互にひどく気に入って、愛着し、はなれることがいやであった。小舎を出てゆけば、しるしの弓矢がはずされなければならない。弓矢がはずされれば、ほかの男が良人の権利を交代するであろう。男にそれが辛かったし、女もそういう自分ののぞまない変化はきらいに思った。未開の人の頭では、その弓矢を小舎の外からはずさないで、男が狩りをする方法は思い当らなかった。餓えがはじまった。それでも二人は、離れなかった。離れるより餓える方を選んだ。そして、いくつもの朝と夜とがすぎた。が、その小舎の前には、もう久しく同じ弓矢が、かけられたままになっている。
野蛮な部落の人々のこころに疑問がわいて来た。考える能力がおぼろげながら発動して、部落の人々は、この小舎の弓矢のかけ工合は異常だと認めた。