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まずしきひとびとのむれ
貧しき人々の群
宮本 百合子
「中央公論」1916(大正5)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页
この様子にびっくりした子供等は、皆馳け集って、指し示された一点を揺れる梢の間から、ながめた。
そこには――葉の茂みが泡立つ浪のように崩れている間からは――白い模様のある黒い布が旗のように、はたはたとはためいているのが見えた。
「何だっぺ? 何があげえにヒラヒラしてんだっぺ!」
「ほんになんだっぺ? 行って見べえか?」
「うん、ほんにそれがええ。さ、行って見ろ。俺等こけえ待ってらあ。なあ、源!」
「ああ、ほんにおめえ行って見ろ。俺らこけえに待ってら」
「何(あん)だ、俺れ一人で行(え)ぐのけえ? 厭(や)んだあ、俺れそげえなこと、やんだあ、おめえ等も一緒に来よ!」
「俺等行(え)ぎだくねえんだもん。おめえ云い出したのでねえけえ。なあ?」
「うん、そうよ」
「そうとも。おめえ云い出したんでねえけえ? 行ってこーよ!」
「おめえ行ってこ。俺等ここで、待ってんべ!」
行って見ようかと云い出した者はすっかり困ってしまった。で、チッチノホー(じゃんけん)して負けた者が行こうと云っても、何といっても、仲間はきいてくれないので、とうとう、彼が一番先に立ってそのあとから皆が付いて行くということに定まった。