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まずしきひとびとのむれ
貧しき人々の群
宮本 百合子
「中央公論」1916(大正5)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页
「せめても極楽往生させてえもんだなあ」
集っていた者の半分は、婆を連れて、陰気にのろのろと、離れて行った。
風が吹くたんびに、菰の端がめくれて、濡れしょぼけた着物だの、足の先だのの見える死骸の番をして、墓場の中に取り残された者共は、ほんとうに真面目な心持で、よく寺の和尚(おしょう)が話す、前世の宿縁とか、極楽とか地獄とかいうことを考えると、何でも黙って堪えていた新さんは、こうして死んで行ってから、自分の見て来たこと、されて来たことを一つ残らず、人間一人や二人はどうでも出来る者に云いつけるのじゃあるまいかと、思われて来た。
そして、親切にした者には好い報いが来るように、ひどくした者にもそれ相当な恐ろしい報いが降って来そうだ。また新さんは降らせる力を持っているらしい。
「天道様あ罰(ばち)いお下しなさんぞ」
とよく云い云いした言葉も、思いあたる。
皆は、こんなにも偉かった新さんに、自分達はあんまりよくつくしてやりはしなかったと思うと、堪らなくすまなく、こわくなった。
「新さん。よーく覚えててくんろよ、俺らおめえを憫然(ふびん)に思ってただが、俺ら貧乏だ、どねえにもすっこたあ出来なかっただかんな?」