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まずしきひとびとのむれ

貧しき人々の群

宮本 百合子

「中央公論」1916(大正5)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页

青空文庫

境遇上そうでもしなければ外に生きようがないのだから、ただ馬鹿にしたり酷(ひど)く云ったりすることは出来ない。もうよぼよぼになって先が見えているのに、朝から晩まで他人の家を経廻(へめぐ)って、気がねな飯を食わなければならないのを思うと可哀そうになる。

で、私は出来るだけ婆に用を云いつけて、食事などもさせ、ちょいちょい古い着物や何かをやった。彼女は私に対して好くは思っているらしいけれども、ひどく貧乏で、恥も外聞もない慾張りな様子が少からず私には気持悪かった。

食べる物でも、膳にのせてやった物ばかりでなく、残り物があったらどうせ腐るのだからくれろと、ぐんぐん持って行く。そんなときに、若しやらないなどと云おうものなら、もうすっかり不機嫌になってポンポンろくに挨拶もしないで帰ってしまうのである。新しい着物でも着ていると、一つ一つ引っぱってみないでは置かない。

そんなことがほんとにたまらなく厭であったけれども、私は、貧しい者のうちに入って行こうとしながら、品振(ひんぶ)っている自分を叱り叱りしてようよう馴れるまでに堪えたのである。

善馬鹿のおふくろが、今までより屡々(しばしば)出入りするようになると共に、だんだん村中の貧しい中でも貧しい者共に接する機会が多く与えられるようになった。